"SaaS is Dead."(SaaS は終わった)という言葉が、近年スタートアップ界隈や VC の間でささやかれている。これはもちろん、SaaS というビジネスモデル自体が消えるという意味ではない。むしろ SaaS は今なお、最も広く普及しているソフトウェア提供形態であり、数多くの企業にとって基盤そのものだ。しかし、その「成長の方程式」は確実に変わりつつある。

背景には、いくつかの構造的変化がある。まず、SaaS 市場の成熟。多くのカテゴリで勝者がすでに決まり、新規参入者が勝ち残る余地は限られてきた。次に、CAC(顧客獲得コスト)の上昇。広告単価は年々高騰し、従来の「トラフィックを買って LTV で回収する」モデルが成立しにくくなっている。

また、生成AIやオートメーション技術の進化により、従来は複雑だったソリューションがよりシンプルに、安価に提供できるようになってきた。SaaS 事業者が売っていた「効率化」や「自動化」は、もはや技術的にはコモディティになりつつある。

このような中で、SaaS 企業が生き残るためには、単なる月額課金モデルのソフトウェア提供者から脱皮し、「成果報酬型」や「サービス一体型」など、より複雑で顧客価値に直結したビジネスモデルへの移行が求められている。

たとえば、「SaaS + 人力サービス」のハイブリッド型。あるいは、「Usage-based Pricing(従量課金)」のように、顧客が得る価値と支払いが一致するモデルへのシフト。さらに、プラットフォーム化して顧客の業務フロー全体に入り込み、エコシステムとしてロックインを高める戦略も有効だ。

"SaaS is Dead." という言葉は、言い換えれば「旧来型 SaaS の終焉」を指している。月額課金でソフトを提供し、スケーラブルにグロースしていくモデルは、もはや誰でも真似できるコモディティだ。その先に求められるのは、顧客のビジネス成果にどう直結するか、そして継続的にどう価値を提供し続けられるかという問いに真剣に向き合うことだ。

だからこそ今、SaaS事業者には「再定義」と「再設計」が求められている。プロダクトだけでなく、提供方法、課金モデル、カスタマーサクセスのあり方まで、すべてを見直すフェーズに入っている。

SaaS は死んだのではない。進化しなければ生き残れないだけだ。